YahooBB訴訟

Yahoo! BB 顧客情報流出で初の被害者による提訴

 ということなんですが、訴状を見ていないのでコメントできない(笑)というのはありつつ、各種ニュースによると「情報は従業員らが不正に持ち出した可能性が高い 」とか言って使用者責任、管理義務違反、で争うということですから、主意的に民法第715条の使用者責任(不法行為構成)、予備的に契約責任(債務不履行構成)で持っていくということでしょうか。刑事ではカタがついているので、不法行為構成が手っ取り早いでしょう(宇治市の住民情報漏洩のときもそんな感じだったような)。契約上の過失、ということになると、おそらく契約責任の範囲から争うことになりますから…

 ただ、宇治市の事件の判例から言うと、あのときはシステムの開発担当者の犯行でしたが(使用者責任、まあ管理不行届といったところでしょうか)、今回のような販売代理店の社長、という立場にある者も被使用者と認められるかどうかは微妙かも、なんて思っていたりします。いちおう、前掲の判例では「実質的な指揮・監督関係」にあるかどうか、が判断基準になってますし。

 あとは、賠償金額でしょうか。宇治市のときは「本件において,被控訴人らのプライバシーの権利が侵害された程度・結果は、それほど大きいものとは認められないこと、控訴人が本件データの回収等に努め、また市民に対する説明を行い、今後の防止策を講じたことを含め、本件に現れた一切の事情を考慮すると、被控訴人らの慰謝料としては、1人当たり1万円と認めるのが相当である。」とまあ、具体的な損害の立証ができなかったことから、裁判所側としてもエイヤで決めた部分がなきにしもあらずなので、ここは流動的でしょう(宇治市のときは、原告は1人あたり30万円を請求してましたから(これも根拠レスだけど))。

 というわけで、手間ばかりかかって大した金額はとれない裁判(笑)ではありますが、宇治市での判例がどこまで尊重され、あるいは覆るか、まあ見物ではあります。全日本の個人情報管理責任者はビクビクしながら注視することでしょう(笑、えないかも)

 さらにちょっと確認してみたんですが、どうも、一般に代理店の場合は使用者責任が認められることもあるみたいですね。損害保険業における保険会社と代理店の責任について日本損害保険代理業協会の説明から(ここでは民法第715条の特則である保険業法第283条で、使用者に独立の法的責任を認めている場合)。電気通信事業における電気通信事業者と代理店の関係も、まあ似たようなものですから。あとは「実質的な指揮・監督関係」を個別に確認していくことになるでしょう。

 ちなみに、ここでいう事業については、いわゆる本来的事業にかかわるものだけではなく、付随的な事業でもOKになります。

 …そういえば、不法行為法は「可」だったことを今更ながら思い出す(笑)