うーん、どうだろう。少なくともエンターテイメントにはなってない。ただのエンターテイメントなら、もっとうまく書く作家は腐るほどいる。たぶん作者も単なるエンターテイメントにするつもりはない。ではノンフィクションか。きっとノンフィクションでもない。たぶん作者も単なるノンフィクションでは書けない。
この微妙な立ち位置が、読み手を幻惑させている。北朝鮮が偽米ドルを製造していることは、公開情報からも、おそらく事実だし、その内実も、まあ、それほど本書から遠い位置にはないのだろうと思われる。どこまでが真実で、どこからがディスインフォメーションか、という読み方をさせてしまうのが本書の肝。
それにしても、前著のような手堅い方法もあったのに、どうしてこの時期に小説(フィクション)という体裁をとったのだろう。あと、ところどころ飛躍したり伏線を張りっぱなしにしたりという箇所があるので、その部分の裏読みも楽しめる、っていう考え方もあるけれど、それも、作者の掌中で踊っているだけなんだろうな。