はてな(2)

 はてなのプライバシーポリシー、改訂するみたいですね。

 問題の元凶は、住所等登録義務化の必然性があんまり感じられないにもかかわらず、それを強行しようとしており、かつ当該住所等の個人情報の保護に関するプライバシーポリシーが揺らいだまま、というところでしょう。

 はてながいうには、住所等を登録するのは、著作権侵害事件等に対し、はてなが何らかの責任を追及されかねないからであり、住所登録がないと

この問題については、現在もはてな内外で様々な議論が行われていますが、インターネット上の問題に詳しい法律専門家の間でも意見が分かれており、過去の判例などからも「可能性がない」とは言い切れないと認識しております。

ということなのだが、微妙な表現ですねぇ…

たぶん、ファイルローグ事件判決(東京地裁平成15年1月29日中間判決)あたりを念頭に置いているのだろうとは思うのだけど、ここから直ちに住所登録がないと、はてなに対して何らかの責任追及が発生するとは思えません。落合弁護士の言うとおり、

私は、ファイルローグ事件で問題となった日本MMOの立場と、「はてな」の立場(特にブログに関して)は、明白に一線を引くことができるし、また、引く必要があると考えています。日本MMOは、東京地方裁判所により発信者と認定されており、もちろん、これについてはいろいろな議論があると思いますが、やはり、発信者と認定されるだけの特殊な事情があったと言うべきでしょう。そのことは、既に指摘したとおりです。

といったところでしょう。判例批評をするほどワタシは偉くないですが(笑)

 ついでにいうと、小倉弁護士のblog(ノーティス・アンド・テイクダウン手続と責任回避)では

むしろ、オンライン上でしか利用者と接しない情報通信事業者がいかにして利用者の氏名・住所等を確実に把握するか、もっと端的に言うならば、どの程度の確実性を実現するかということが問題なのであって、情報通信事業者は利用者の氏名・住所等の個人情報を把握すべきではなく、できる限り匿名性を保障すべきであるというのは、本筋としてはおかしいのではないかと思います。

とありますが(まあ、小倉弁護士の場合は、ファイルローグ事件の弁護人であるから…)、今回の場合、そもそもはてなが「利用者の氏名・住所等の個人情報を把握」する必要性が感じられないのです。だって、はてな自身が、

権利侵害行為に対して一企業として適切な対応を行い、末永くサービスを提供し続けるためには、個人を特定するのに最低限必要な氏名・住所をご登録頂き、「ユーザーの皆さんがどなたなのか」をより正確に把握しなくてはならないと判断しました。

と、違法行為への対応での必要性「のみ」を理由に掲げているわけで、その必要性がファイルローグ事件判決から導き出されるものだとすると、落合弁護士のいう「発信者と認定されるだけの特殊な事情」が、はてなに存在していない以上(と、ワタシは考えています。もっとも、小倉弁護士はこの論の立て方自体を争っているわけだが…)、じゃあ何のために情報収集をしているんだろう? という至極当然の疑問が発生してくるわけです。「匿名性を保障すべき」って、今回の場合、そもそも保障する必要はないけれど、利用者がサービスを享受するにあたって必要でない個人情報を、はてなに開示する理由がなくなってしまうわけです。しかも、プライバシーポリシー自体は相変わらず揺らいだ状態で。